生殖補助医療の「親」明確化

毎日新聞によると、

政府は、不妊治療で夫婦以外の第三者の精子・卵子を用いて出産した場合の親と子の法的関係を定めるため、民法見直しの検討に入った。明治時代に制定された民法は、第三者が関わる生殖補助医療で子どもが生まれることを想定しておらず、法整備の必要性が指摘されてきた。出産した女性を「母」、第三者の精子提供に同意した夫を「父」とする方向だ。
生殖補助医療を巡る課題は多いが、まずは子どもの法的地位の確定を目指す。10月に法務省が有識者研究会を設置して議論を開始。法制審議会を経て早ければ2020年にも通常国会に法案を提出する。
 生殖補助医療によって生まれた子どもの親子関係に関する法律上の規定はない。だが、国内では精子提供によって1万人以上が生まれているとされ、親子関係を巡る訴訟も起きている。
 国内での卵子提供については、従来は親族によるケースがほとんどで、当事者同士の話し合いで親子関係を決めていた。しかし、昨年初めてNPO法人の仲介で匿名の第三者から卵子提供を受けた女性が出産。今年も同様の事例が報告されており、トラブルの増加も予想される。
 これまでも法制化の動きはあった。旧厚生省の専門委員会は00年12月、親子関係の確定に関する法律の整備などを条件に、第三者の精子、卵子、受精卵の提供による生殖補助医療を認める報告書をとりまとめた。これを受けて法務省の法制審部会は03年7月、親子関係を整理する民法の特例に関する中間試案をまとめたが、議論は中断した。
16年5月には自民、公明両党が議員立法で親子関係を定める民法の特例法案をまとめたが、国会への提出には至っていない。
 過去の検討ではいずれも、第三者の卵子を用いて出産した場合は、卵子の提供者ではなく産んだ女性を「母」と規定。夫が無精子症などのため第三者の精子を用いて妊娠した場合、夫は生まれた子の父であることを否認できない、と整理した。精子も卵子も提供を受けることは、遺伝関係が全くないので認められない。

生殖補助医療

 精子を子宮内に注入する人工授精や、体外で卵子と精子を受精させ受精卵を女性の子宮に戻して妊娠させる体外受精や顕微授精などによる不妊治療法。卵子のない女性が第三者から卵子の提供を受けるケースのほか、別の女性に妊娠、出産してもらう「代理出産」も含まれる。国内では代理出産は事実上、禁止され、海外で治療を受けるケースが後を絶たない。

複雑な事案 課題残す

 生殖補助医療を巡っては、規制のあり方や生まれた子の法的地位の確定など論点が多岐にわたり、生命倫理も絡んで意見集約が難しく、法制化が実現していない。このうち、親子関係の法的規定については過去の議論で方向性が示されており、政府は比較的合意が得やすいとみて法整備に踏み出す。
 政府の動きを受け、自民党も、民法の特例法案を議員立法でまとめた2016年以来、休眠していた「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム(PT)」を再開させる方針だ。

法整備が進まない中、医療の現場では混乱も起き始めている。

 匿名の第三者の精子を使って長年不妊治療を行ってきた慶応大病院が、今年8月から新規の患者の予約受け付けを停止。生まれた子どもが遺伝上の親を知る権利が世界的に認められてきていることを伝え始めたところ、提供者が減ったとしている。精子提供者が、将来、自身の遺伝子を持つ子どもから接触されることを懸念しているとみられる。
 法的な親子関係があいまいなだけでなく、子どもの「出自を知る権利」についてもルール化されていないことが問題を大きくしている。「代理出産」を認めるかどうかなども課題だ。
 親子関係の規定は長年の宿題に対する最低限の回答と見るべきで、政府や国会は、高度化・複雑化する生殖補助医療をどこまで認めるかなど抜本的に検討し、答えを出すべき時期に来ている。

2018-09-29

カテゴリー: ブログ タグ: パーマリンク