ミトコンドリア移植

asahi.comによると

実施した「HORACグランフロント大阪クリニック」(大阪市)によると、27〜46歳の女性53人から卵巣の組織を採取し、含まれる細胞からミトコンドリアを抽出。本人の卵子に精子とともに注入し、子宮に戻した。血液検査で妊娠と判定したのが19人、うち8人が出産し、双子2組を含む10人が生まれた。
2回以上体外受精を行っても受精卵の発育が悪く、妊娠しなかった女性を対象にした。森本義晴院長はエネルギーのもとを作るミトコンドリアを増やし、卵子の質を改善するのが狙いと説明、「妊娠したのはミトコンドリア移植の効果だ」と主張する。現時点で生まれた子の発育状況などに問題はなく、5歳ごろまで調べる予定という。治療費は体外受精も含め1人約150万円で患者が負担した。

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ミトコンドリア注入、女性4人から5人誕生

体外受精の際に、女性の卵巣から採取した細胞内の小器官「ミトコンドリア」を使って卵子を活性化させる新たな不妊治療の手法で、妊娠した4人から国内で初めて5人の子供が生まれたと、大阪市北区のクリニックが21日、発表した。
 この治療法は米国で開発され、加齢で老化した卵子の質の改善を図る「卵子の若返り」などとしても注目されている。世界では200例を超す実施例があり、30人以上が生まれている。
 日本でも、平成27年12月に日本産科婦人科学会が臨床研究として実施を認めていたが、有効性や安全性に懸念を示す専門家もいる。
 実施したのは、「HORACグランフロント大阪クリニック」。森本義晴院長によると、28年1月からこれまでに21人の女性がこの治療を受けたという。
 事前に腹腔鏡手術で摘出した卵巣組織の一部からミトコンドリアを採取し、父親の精子と一緒に卵子に注入。6人(27〜44歳)が妊娠に至り、今年の2月から6月にかけて4人(27〜36歳)が出産した。
 内訳は男児2人、女児3人の計5人で、男女の双子も含まれる。一般的な体外受精は1回あたり60万〜70万円だが、この治療は170万円ほど。クリニックでは今後も治療や生まれた子供の追跡調査を続け、安全性の確認を行う。
 森本院長は「子供の健康状態はいずれも問題ない」とした上で、「卵子の質を上げることができる治療は画期的だ。従来の不妊治療では妊娠が難しい人でも妊娠の可能性が高まった」と話している。

AGEの蓄積が不妊治療の成績に影響する。

モリンダ ワールドワイド インク 日本支店は、11月3日〜4日にかけて開催された第61回日本生殖医学会学術講演会・総会にて、研究「終末糖化産物(AGEs)の蓄積はARTの治療成績に影響する」について発表した。

不妊原因別に対象患者を分けて平均AGE値を比較
不妊原因別に対象患者を分けて平均AGE値を比較

同研究は、医療法人三慧会 HORACグランフロント大阪クリニックと共同で行ったもの。
AGEs(終末糖化産物、以下 AGE)は、タンパク質と糖が反応してできた「老化原因物質」と考えられている。今回は、配偶子や受精卵を体外で取り扱う高度不妊治療であるART(生殖補助医療)を受ける女性患者148名を対象に、体内のAGE値を測定する研究を行った。
AGE値は、TruAgeスキャナーを用いて、皮膚に蓄積したAGE値を測定した。右前腕内部を3回測定し平均値を決定。不妊症患者のAGE値は相対的に高いかを調べるため、不妊原因別に対象患者を分けて平均AGE値を比較したところ、「子宮筋腫」群と「胚質不良」群のAGE値が「原因無し」群(男性不妊)と比較し、有意に高値を示したという。
低AGE群、高AGE群での各ホルモン値の比較では、「FSH値」「DHEA-S値」「テストステロン値」「プロラクチン値」それぞれとAGE値の間には有意な相関は見られなかった。しかし、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモン値「AMH値」を比較したところ、39歳以下の群では、高AGE群で有意にAMH値が低値を示した。

「高AGE群」、低い患者を「低AGE群」に分類
「高AGE群」、低い患者を「低AGE群」に分類

高AGE群・低AGE群各ホルモン値の比較結果
高AGE群・低AGE群各ホルモン値の比較結果

「高AGE群」と「低AGE群」に分けて受精率、良好胚率、胚盤胞率、良好胚盤胞率を比較すると、それぞれの値とAGE値の間に有意な相関は見られなかった。ただし、患者を妊娠例と非妊娠例に分けてAGE値を比較した結果、非妊娠例では妊娠例と比較して有意にAGE値が高値を示した。

AGE値とIVF-ET(体外受精-胚移植)治療成績の比較
AGE値とIVF-ET(体外受精-胚移植)治療成績の比較

以上の結果から、AGEの蓄積と不妊ならびにARTの治療成績の悪化には相関があることが明らかとなった。また、同時にAGEの測定は卵巣機能や不妊原因の診断を行う上での有用な指標であり、バイオマーカーとして利用できることも示唆された。