新型水虫が格闘技部の中高生に猛威

 海外から持ち込まれた新型水虫菌の感染が全国に広がり、神奈川県内でも猛威を振るっている。新型菌は感染力が強く、頭や体に発症する特徴があり、柔道やレスリングに取り組む生徒の間で流行。自覚症状がないままに感染を広げる保菌者が増え、競技団体は大会参加選手全員に医師による診断を義務付けるなど、拡大防止に躍起だ。

 新型水虫菌は南北アメリカや欧州で一般的にみられる白癬(はくせん)菌「トリコフィトン・トンズランス」。順天堂大学練馬病院の比留間政太郎教授によると、従来の水虫菌に比べて皮膚への侵入速度が速いため、感染力が強く、治りにくい特徴があるという。症状が出るのは足ではなく、主に体や頭だ。

 横浜市内の高校で柔道部に所属する女子生徒(17)は昨年夏、首に虫さされのような湿疹(しっしん)ができた。次第に腕にも広がり、頭にふけが出るようになった。診察を受けて、新型水虫と判明。塗り薬や内服薬で1週間ほどで症状が消え、1カ月間治療を続けて完治した。女子生徒は「自覚症状がほとんどないので、放置してしまった」と振り返る。

 海外遠征をするような柔道やレスリングの強豪高校で、集団感染が報告されるようになったのは2001年ごろ。同教授らが06年、東京都内で行われた全国中学校柔道大会で男女496人を調査したところ、9・1%に当たる45人の感染を確認。被害が拡大していた。

 その後、競技団体で対策が進んだことで、感染拡大は沈静化した。だが、比留間教授は「治療せずに半年ほど放置すると自然に症状はなくなるが、菌は毛穴に隠れたままで、保菌者として感染を広げてしまう」と指摘。感染拡大を防ぐためにも、すぐに治療を受けるよう呼び掛けている。

 こうした事態を重く見た県レスリング協会は、県内で開かれる大規模な大会で医師による診断を選手に義務付けている。

 今年1月に逗子市内で行われた高校生のレスリング関東大会では、専門医が参加全選手を診察。感染が確認された1人が出場停止となった。県柔道連盟も感染した選手を大会に参加させないよう、指導者同士で申し合わせをするなど、対策に力を入れている。

 済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区)皮膚科の畑康樹部長は、12年度から全国の中学校で武道が必修化され、感染拡大を招きかねないことに危機感を抱いている。「練習場や練習着を常にきれいにして、練習直後に頭や体をよく洗うなどの予防策が重要。感染が疑われたら放置せず、すぐに医師の診察を受けてほしい」と話している。

◆新型水虫菌トリコフィトン・トンズランス 菌が皮膚や体毛に付くことで感染。頭に発症するとシラクモと呼ばれ、ふけやかさぶたができ、放置すると重症化する。頭皮がうんで毛が抜けたり、抜けた部分の毛が生えなくなったりするケースもある。