中皮腫患者の肺にラジウム蓄積

 岡山大地球物質科学研究センター(鳥取県三朝町)の中村栄三教授=地球・宇宙化学=らのグループは27日までに、悪性胸膜中皮腫患者の肺組織に高濃度の放射性物質・ラジウムが蓄積していることを発見した。長年にわたり体内の正常細胞が「内部被ばく」することでDNAが損傷、がん細胞に変異するとみている。

 アスベスト(石綿)が原因と言われながら、詳細が分かっていなかった中皮腫発症メカニズムの全容解明につながる成果として注目される。

 国立病院機構山口宇部医療センター(山口県)の岡部和倫外科系診療部長との共同研究。論文は28日発行の日本学士院の学術誌最新号で発表される。

 中村教授は「中皮腫発症の直接的な原因はアスベスト繊維そのものではなく、アスベストに誘発されてできた重金属を集めるタンパク質である可能性が強い」と指摘。「鉄を体内に供給する継続的な喫煙や粉じんなども発症につながると考えられる」としている。

メタボはTリンパ球が原因、内臓脂肪で炎症

 内臓に脂肪がたまると、そこに体内で免疫を担う「Tリンパ球」が集まって炎症を引き起こし、高血糖などのメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)につながることを、東京大学の永井良三教授らのグループがマウスを使った実験で突き止めた。

 Tリンパ球の働きを抑えるメタボ治療薬の開発に道を開くと期待される。26日発行の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。

 永井教授らは、高脂肪食で太ったマウスの脂肪組織に「CD8陽性T細胞」とよばれるTリンパ球が集まり、炎症を引き起こすことを確認。このTリンパ球の働きを抑えたところ、炎症が改善し、インスリンの働きもよくなって血糖値が下がった。Tリンパ球を持たないマウスに高脂肪食を与えても、炎症は起きなかった。

 永井教授は「Tリンパ球の働きをうまくコントロールする薬を開発できれば、メタボリックシンドロームに伴う生活習慣病などの治療に役立つだろう」と話す。

B型インスリン抵抗症、ピロリ菌除去で完治

 確立した治療法がない特殊なタイプの糖尿病患者を、胃の中にいるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を除くだけで完治させることに、東北大医学系研究科の片桐秀樹教授と岡芳知教授らのチームが成功した。胃潰瘍(かいよう)や胃がんの原因の一つとされるピロリ菌は、一般に糖尿病には関係ないとみられていた。英医学誌ランセットに発表した。

 この患者は男性で、血糖値を下げるインスリンの働きを妨害する抗体を自分でつくってしまう「B型インスリン抵抗症」という糖尿病を発症していた。治療中にピロリ菌が見つかり、投薬して除菌した。すると4カ月ほどで抗体が消え、糖尿病の指標も正常になった。1年後も症状は現れず完治と判断された。

 ピロリ菌感染で、抗体をつくる免疫機構に異常が起きた可能性がある。片桐教授は「この糖尿病は数万〜数千人に1人と推測される。除菌が根治の治療法になれば福音だ」と話す。

「腹7分目」健康の元

 摂取カロリーを約3割減らすと、糖尿病やがんといった加齢に関連した病気で死ぬ確率が3分の1に減ることが、米ウィスコンシン大チームがアカゲザルを使った約20年間の実験でわかった。米科学誌サイエンスに発表した。

 摂取カロリーの制限で老化を防げることは線虫やショウジョウバエ、マウスなどでは確認されているが、霊長類ではよくわかっていなかった。

 チームは89年以降、計76匹のアカゲザルについて、好きなだけエサを食べさせるグループ(38匹)と、摂取カロリーをそれより3割減らすグループ(38匹)に分けて飼育した。このうち、いまも生存しているサル(平均27歳)は、カロリー制限したサルが20匹、好きなだけ食べさせたサルは13匹だった。

 飼育中に死んだサルを解剖して調べると、糖尿病やがん、心血管疾患、脳の萎縮(いしゅく)など加齢性の病気で死んだ割合が「カロリー制限なし」で14匹に上り、「制限あり」5匹の約3倍に達していた。

 実験開始時の年齢は7〜14歳の大人。このことからチームは、大人になってからカロリー制限をすることで、加齢性の病気の発病を減らし、老化を遅らすことができた、としている。

 カロリー制限で寿命が延びる仕組みはまだ不明だが、糖の代謝機能の改善がかかわっているとみられている。今回の成果について、京都大病院老年内科の近藤祥司助教は「人に近いサルでカロリー制限の効果が示されたことはすばらしい。ただ、人の場合にどの段階でカロリー制限をすればいいかなど、難しい問題も残っている」と話す。

出生時に低体重、生活習慣病の傾向

 出生時の体重が軽かった人は生活習慣病になりやすい傾向があることを、国立循環器病センター(大阪府吹田市)のチームが明らかにした。男性は総コレステロール値が高く、女性は高血圧になりやすかった。胎児のころの低栄養の反動で、栄養を抱え込む性質を持った可能性があるという。名古屋市で12日から開かれる日本周産期・新生児医学会で発表される。

 チームは、06〜08年に同センターで検診を受けた男性521人、女性720人の計1241人(40〜69歳)を対象に調査。出生時の体重2500グラム以下、3500グラム以上、その間(2500〜3500グラム)の3群に分け、血圧や血糖値、コレステロール値などを比較した。

 その結果、男性では出生時の体重が軽いほど、総コレステロール値と「悪玉」とされるLDLコレステロール値が高かった。女性では高血圧の傾向があった。

 チームの桂木真司医長(周産期治療科)によると、出生時の体重は70年代以降は減少傾向にあり、妊婦の体重も平均で1キロ近く少ないという。若い女性の「やせ願望」が背景にあるようだ。

 桂木さんは「母親の体重が軽いと新生児の体重も軽くなる傾向がある。『小さく産んで大きく育てる』というのはだめ。太り過ぎも危険だが、妊娠時はダイエットのことはあまり気にし過ぎないでほしい」と話す。