モリンダ ワールドワイド インク 日本支店は、11月3日〜4日にかけて開催された第61回日本生殖医学会学術講演会・総会にて、研究「終末糖化産物(AGEs)の蓄積はARTの治療成績に影響する」について発表した。
同研究は、医療法人三慧会 HORACグランフロント大阪クリニックと共同で行ったもの。
AGEs(終末糖化産物、以下 AGE)は、タンパク質と糖が反応してできた「老化原因物質」と考えられている。今回は、配偶子や受精卵を体外で取り扱う高度不妊治療であるART(生殖補助医療)を受ける女性患者148名を対象に、体内のAGE値を測定する研究を行った。
AGE値は、TruAgeスキャナーを用いて、皮膚に蓄積したAGE値を測定した。右前腕内部を3回測定し平均値を決定。不妊症患者のAGE値は相対的に高いかを調べるため、不妊原因別に対象患者を分けて平均AGE値を比較したところ、「子宮筋腫」群と「胚質不良」群のAGE値が「原因無し」群(男性不妊)と比較し、有意に高値を示したという。
低AGE群、高AGE群での各ホルモン値の比較では、「FSH値」「DHEA-S値」「テストステロン値」「プロラクチン値」それぞれとAGE値の間には有意な相関は見られなかった。しかし、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモン値「AMH値」を比較したところ、39歳以下の群では、高AGE群で有意にAMH値が低値を示した。
「高AGE群」と「低AGE群」に分けて受精率、良好胚率、胚盤胞率、良好胚盤胞率を比較すると、それぞれの値とAGE値の間に有意な相関は見られなかった。ただし、患者を妊娠例と非妊娠例に分けてAGE値を比較した結果、非妊娠例では妊娠例と比較して有意にAGE値が高値を示した。
以上の結果から、AGEの蓄積と不妊ならびにARTの治療成績の悪化には相関があることが明らかとなった。また、同時にAGEの測定は卵巣機能や不妊原因の診断を行う上での有用な指標であり、バイオマーカーとして利用できることも示唆された。