小麦入りせっけんで食物アレルギー 厚労省が表示義務化

 小麦の成分が入ったせっけんを使い続けて食物アレルギーを起こした例があったとして、厚生労働省は小麦成分の入った医薬部外品や化粧品について成分表示をメーカーに義務づける通知を出した。かゆみや刺激を感じた場合は、使うのを控えるよう表記することも求めた。

 厚労省によると、今年9月からの約1カ月間に全国の医療機関から21件のアレルギー報告があった。いずれも小麦を分解して作った成分の入ったせっけんを数年間使い続けた人たちだった。パンやケーキなどの小麦食品を食べた後に運動すると、手や足にかゆみが出たり全身が赤くなったりしていた。血圧低下などの強い反応が出る例もあった。せっけんの使用を中止すると症状は治まったという。

 30代女性の例では、約2年前から小麦成分入りのせっけんを使い続けていた。パンを食べた後、自転車で5分ほど走ったら、手足のかゆみや全身が赤くなるなどのアレルギー症状が出たという。

 小麦成分は、手触りをなめらかにしたり泡立ちをよくしたりする。以前から製品はあったが、最近、アレルギーを起こすことが分かってきたという。「加水分解コムギ」などと表示される。厚労省の通知(10月15日付)は都道府県あてで、メーカーに対し、小麦成分を含む商品には半年以内に容器や外箱に成分名などを記載させるよう求めた。

難聴起こすウイルス、新生児300人に1人感染 厚労省

 胎児の時に感染すると難聴や脳に障害が起きる危険性のある「サイトメガロウイルス」に、新生児300人に1人の割合で感染していることがわかった。厚生労働省の研究班が新生児2万人以上を対象に国内初の大規模な調査をした。抗体のない妊婦が感染すると胎児に感染することがある。通常は幼児期に感染し抗体があるが、最近は抗体のない妊婦が3人に1人程度と増えている。胎児の感染も増加する可能性がある。

 研究班は全国25施設で生まれた新生児2万1272人(2010年7月末時点)を調査。尿を採取してウイルスの有無を検査し、66人が陽性と判明した。幼児期に感染しても症状が出ず、胎内感染でも多くは発症しないが、うち15人に難聴や脳の発達異常など典型的な症状が見られた。

 今回の調査で陽性だった新生児のうち47人を調べたところ、31人は上に兄か姉がいて多くから同じウイルス株が見つかった。自然に感染した上の子から、妊娠中の母親が初感染し、それが胎児に感染したと推測されるという。

 この抗体を持っている妊婦の割合は年々低下している。1986年の国内での調査報告では96%が抗体を持っていたが、今回調査した妊婦4306人のうち、確実に抗体があるのは66%だった。衛生環境の改善などで幼児期の感染が減ったためとみられる。

 研究班は先天性感染児への治療ガイドラインも検討。抗ウイルス薬を6週間投与することで改善する例もあり、難聴も早期に発見し補聴器をつけることで言語発達への影響を少なくできるという。

 研究班代表の古谷野伸・旭川医科大講師は、感染したばかりの乳幼児の尿や唾液(だえき)にはウイルスが多く含まれているため、妊婦はおむつを取りかえた後には手洗いし、口移しやキスなどを避けるよう呼びかけている。

 サイトメガロウイルスは、同様に胎児に母子感染症を起こす風疹などとは違い、感染しても妊婦にはっきりした症状がないため気づきにくい。古谷野さんは「これまで難聴などの障害があっても原因がわからず、遺伝的な病気と悩んでいた家族もいたが、サイトメガロウイルスが原因の場合も多い」と指摘する。

がん治療費自己負担、年101万円

 国内のがん患者が1年間に支払う治療関連費用の自己負担額は、1人平均100万円を超え、高額療養費制度などの償還額を差し引いても年間40万円近くにのぼることが、濃沼信夫・東北大教授(医療管理学)の調査で分かった。

 29日、京都市内で開催中の日本癌治療学会学術集会で発表した。

 調査は2004〜09年、がん治療を行う約50医療機関の患者約6600人(平均63歳)に、領収書や家計簿を見ながら支出額を記入してもらった。

 その結果、医療機関で支払う治療費に、健康食品や民間療法などに使った費用も含めると、自己負担額は1人年間101万円。高額療養費制度や民間医療保険などの利用による償還・給付額は平均で年間63万円で、それを差し引いても年40万円近い出費になる。

 中には、経済的な理由で治療を変更・断念した患者も3%程度いた。

 一方、日本医療政策機構が昨年、約1600人のがん患者らから回答を得た意識調査では、治療費について約7割が「とても負担が大きい」「やや負担が大きい」と回答している。

 濃沼教授は「長期間にわたり高額の費用を負担しているがん患者は多い。経済的な理由で適切な医療を受けられなくなることがないよう、医療制度を抜本的に改革する必要がある」と話している。

「卵巣明細胞腺がん」発生抑える遺伝子発見

 日本人の卵巣がんの4分の1を占める「卵巣明細胞腺がん」の発生を抑える遺伝子を、島根大と米ジョンズホプキンス大の研究チームが発見し、25日発表した。

 卵巣明細胞腺がんは、悪性度が高いうえ、抗がん剤が効かないため致死率も高く、治療薬開発への応用が期待される。

 研究チームは、患者約50人から採取したがん細胞の遺伝子を解析した。その結果、「ARID1A」と呼ばれる遺伝子が約6割で変異しており、この遺伝子の機能が失われると、がんが発生することを突き止めた。

 卵巣明細胞腺がんの原因は未解明で、進行性の患者の多くが発見から1、2年で死亡する。国内では卵巣がん患者の25%を占め、欧米(8%)と比べ発生率が高く、過去30年間で5倍に増えているという。

 研究チームの中山健太郎・島根大講師は「この遺伝子の機能を回復する抗がん剤を開発できれば有効な治療法となる」と話している。

体質、病気、知能…市販の遺伝子検査に警鐘

 才能や性格、病気のなりやすさがわかるとした市販の遺伝子検査が増えていることについて、遺伝医学の専門家で作る日本人類遺伝学会は27日、「科学的に確認されていないにもかかわらず、有用であるかのような誤解を与えている場合も少なくない」などとして、監督体制の早急な検討を求める見解をまとめた。

 見解では、遺伝医学の専門家を介さずに、企業やクリニックで、生活習慣病のなりやすさや、肥満、薄毛などの体質、文系・理系の知能、音楽や美術、運動の適性などを調べる検査が広がっていると指摘。こうした検査の多くは、個人の体質を確実に表したり、ある病気を発症するかどうか明確な答えを与えるものではないとし、「専門家にとっては検査の意義さえ疑問視される」と批判した。

 個人情報保護の対策も不明だと問題視。さらに遺伝子検査を実施する場合の条件として、科学的根拠や結果の解釈、限界について、正確な情報をわかりやすく伝える体制の整備を求めた。

 特に、未成年者に対しては、自己決定権を尊重する理由から、専門施設が行う遺伝病の検査においても原則行わない旨の指針を定めており、子どもの能力や適性の遺伝子検査は「人権保護や差別防止の観点からも十分な考慮が必要」と安易な実施にくぎを刺した。