子宮に戻す体外受精卵は原則上限2個に…産科婦人科学会

日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は15日、理事会を開き、体外受精で子宮に戻す受精卵の上限数を、従来の原則3個から2個とする会告(指針)の改正案を承認した。

 母子への危険性が大きい多胎妊娠を防ぐのが狙い。

 ただし2個戻した場合、依然として多胎妊娠の可能性が高いため、会告に「子宮に戻すのはできるだけ1個を目指す」と付け加える。今後、学会員の意見を聞いた上で、4月の学会総会で正式決定する。

 同学会は、多胎妊娠を防ぐため、子宮に戻す受精卵の数を会告で原則3個以内としてきた。

 しかし、最近の生殖医療技術の発展で、子宮に戻す数を1〜2個に減らしても妊娠率は変わらず、すでに国内の不妊治療施設では2個以内が主流になっていることから、会告を改正することにした。

 また、多胎妊娠の増加に伴い、綿密な健康管理の必要な母親や未熟児が増え、産科医不足で余裕のない周産期医療の現場をさらにひっぱくさせていることも考慮したという。

心筋シートで心臓再生

 移植でしか助からないとされる拡張型心筋症という重い心臓病の男性患者(56)が、自身の筋肉からつくった「心筋シート」を心臓に張る「再生治療」を大阪大病院で受けて機能が回復し、月末にも退院することになった。世界初の臨床研究で、心臓病治療の選択肢を広げる可能性がある。

 心筋シートは、患者の太ももの筋肉(約10グラム)から取り出した筋芽細胞などを培養し、直径約5センチ、厚さ約50マイクロメートルの膜にしたもの。これを3、4枚重ねて心臓の表面に張ると、弱った心筋の再生が期待される。

 患者は補助人工心臓をつけて心臓移植を待っていたが、今年5月に心筋シートを張る手術を受けたところ心臓から送り出される血流が改善。心不全も軽くなったため、9月に補助人工心臓を外した。

 大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)によると、シートの影響で血管の増殖因子などが増え、心筋の再生が促された可能性があるという。

 東京女子医大との共同研究。同様の治療を2年間に計6人に実施する予定という。澤教授は「症例を積み重ねて普及をめざしたい」と話している。

精子保存に「凍結乾燥」

 カップラーメンのように、人間の精子を凍結乾燥(フリーズドライ)した後、正常な状態に戻すことに、旭川医科大の上口勇次郎教授と米ハワイ大の柳町隆造教授の研究チームが成功した。

 不妊治療では精子を液体窒素で保存する方法が広く用いられているが、停電などの事故で精子が失われる恐れが指摘されており、バックアップとして、この手法が役立つ可能性があるという。

 英国の生殖医学誌「ヒューマン・リプロダクション」に掲載された。

 実験では、人間の精子を特殊な溶液に37度で10分間浸した後、液体窒素で急速凍結し、真空内で凍結乾燥。その結果できた乾燥精子を4度の冷蔵庫で1か月間保存した後、水で元に戻し、精子の染色体の状態を観察したところ、8〜9割が正常で、自然の状態の精子と差がなかったという。

 一方、マウスでも、同様の方法で凍結乾燥して元に戻した精子を卵子と受精させ、代理母マウスの子宮に戻したところ、正常に胎児が発育。精子の遺伝情報が正常に残っていることが確認されたという。

 実験を行った日下部博一助教は「不妊治療への応用のほか、貴重な野生動物や遺伝子組み換え動物の精子を保存するのにも利用できる」と指摘している。

米ぬかで「かゆみ」抑制

米ぬかに含まれる成分に、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを引き起こす「IgE抗体」にくっつき、炎症作用などを抑える働きがあることを東京大の尾崎博教授、東京海洋大の潮(うしお)秀樹准教授らが突き止めた。天然成分に由来する新しい抗アレルギー薬につながると期待される。

 研究チームは、米ぬか成分のうち、紫外線吸収、抗酸化作用などが報告されていたγ(ガンマ)?オリザノールに注目。研究チームは、この成分が腸などの炎症を抑えることを確認。アレルギーにも効果があるか動物や細胞での実験で調べた。

 その結果、米ぬか成分は、IgE抗体と結びつき、抗アレルギー作用もあることを発見した。アレルギーは、免疫細胞が作るIgE抗体と抗原が、肥満細胞に作用してヒスタミンなどの「かゆみ物質」を血中に放出して、炎症やかゆみを起こす症状。米ぬか成分がIgE抗体と結びつくことで、かゆみ物質の放出が70〜80%抑制された。これまでの抗アレルギー薬の抑制効果を上回っているという。さらに、米ぬか成分が肥満細胞以外の免疫の働きを弱め、炎症を抑えることも突き止めた。

 東大と東京海洋大は特許を取得。化粧品などを販売する「ナチュラルサイエンス」と契約を結び、米ぬか成分入りの保湿オイル「バリアオイルAD」を20日に発売する。年間90万トンが廃棄される米ぬかの有効活用としても注目される。

有機栽培向け「植物保護液」から無登録農薬成分

 野生の植物から作った「植物保護液」として販売され、有機農業や家庭園芸などに使われていた散布用の液体から、毒性が強く国内での使用が禁止されている農薬成分が検出されていたことが分かった。この液体は全国の種苗店や農協、ホームセンターを通じて農家や個人へ売られ、有機JAS認定を受けた農産物にも散布されていたとみられる。無登録の農薬が使われた農作物が有機栽培と称して流通していた可能性があり、農林水産省は使用の実態調査を始めた。

 農薬成分が検出された植物保護液は「アグリクール」。三重県伊賀市の有限会社「三好商事」(三好一利社長)が約12年前から中国のメーカーに委託して製造。マメ科の野生植物を主原料とし、販売代理店のホームページでは「植物が本来持っている抵抗力を引き出し、強く元気にする」「有機・減農薬栽培に最適」などとしている。500?1000倍に薄めて植物や土壌に散布するという。

 農水省の農業資材審議会会長を務める千葉大大学院園芸学研究科の本山直樹教授が今年、アグリクールを分析したところ、「アバメクチン」という農薬の成分が約1600ppm検出された。複数の農業資材関連企業が検査機関に依頼した分析でも、同様の結果が得られたという。

 アバメクチンは海外で殺虫剤として使われている農薬だが、国内の登録農薬に比べて毒性が強く、農薬取締法により輸入や販売が禁止されている。本山教授は「アグリクールに含まれるアバメクチンの濃度は高くないが、登録農薬ではないため使用量や散布方法などのルールが決められておらず、使い方によっては健康に悪影響を及ぼす恐れがある」と指摘している。

 大手種苗会社は3、4年前からアグリクールを種苗店や農協など全国の数百の取引先に卸したほか、家庭向けに個人へも通信販売し、年間1000万円ほどを売り上げていた。千葉大の報告をもとに、同社が検査機関に成分分析を依頼した結果、アバメクチンが検出されたという。この会社は今年4月、アグリクールの販売を中止している。

 関東地方の農協は、06年から組合員向けに販売。組合員の約300のイチゴ農家などが使った。今年3月末、仕入れ先から販売自粛の連絡があり、使用中止を決めたという。また、朝日新聞が全国約50の有機農産物JAS認証機関に聞いたところ、少なくとも10以上の有機JAS認定農家がアグリクールを使っていたと回答した。

 無農薬栽培に取り組んで有機JAS認定の申請をしている岡山県の果樹農家は、一昨年と昨年、複数の公立小学校に給食用としてアグリクールを使用したブドウを納入した。農家の男性は「有機JASに適合する資材というふれこみを信じて使っていた」と話す。

 三好商事は「液体自体は中国の会社に、農薬など一切の化学薬品を入れないよう注文して作っている。本山教授の分析結果を知り社長が現地に行って確認したが、農薬混入はないという報告を受けた」としている。

 農水省は全国の有機JAS認証機関に対し、認定農家のアグリクールの使用状況について報告を求めている。