男性の長距離サイクリングに不妊リスク

オランダ・アムステルダム(Amsterdam)で開催中の欧州ヒト生殖学会議(European Society of Human Reproduction and Embryology、ESHRE)で29日、長距離サイクリングなどの自転車の集中訓練が男性から「父親」になるチャンスを奪う可能性があるとした研究結果が発表された。

 スペインのコルドバ大学医学部(University of Cordoba Medical School)の研究チームは、以前から指摘されていた男性の不妊症と長距離サイクリングとの関係性を詳しく探ろうと、水泳、自転車、マラソンの3競技を組み合わせたトライアスロンに着目。健康なスペイン人選手15人から提供を受けた詳細な練習メニューと精液を分析した。

 その結果、自転車に乗っている時間が長い選手ほど、精液の形態や外見の劣化が進んでいることがわかった。具体的には、15人中、正常な精子の割合は 10%以下。週に300キロ以上のサイクリング訓練を行う選手では4%以下だった。一般的に、4%以下という数字は、深刻な不妊とみなされる数値だ。

 なお、マラソンや水泳については、不妊との相関性は見いだされなかった。

 考えられる理由としては、長時間、サドルに圧迫された睾丸が炎症を起こしたり、密着したタイツにより局部に摩擦熱が発生する可能性が挙げられる。高温環境では精子が生産されにくいからだ。

 一方、研究を率いたディアナ・ファーモンデ(Diana Vaamonde)氏は、局部への圧迫により有害な活性酸素が増殖し、細胞構造を破壊することも考えられると話す。 
 
 不妊への予防措置として、同氏は、抗酸化物質の摂取や訓練内容の改善に加え、高度な集中訓練を行う場合には、前もって精子を冷凍保存しておく方法を提唱している。

 長距離サイクリングと男性の不妊症との関連は、6年前のマウンテンバイカーの研究で初めて指摘された。

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