天地人合一説
内経の根本的思想は人体を小宇宙とみなし,天地間の自然現象すなわち大宇宙と対比して考察
する天地合一の思想であり,経験の統一を自然現象に求め,これを観察分類することによって直
観的常識を駆使し,人体の機能や病態を究めようとしている.このように無限にして不断なるエ
ネルギーの流れが,天地間の自然現象であり,小宇宙たる人体の生命現象もこの自然現象と同一
であることを説き,さらにこれらの相互関連を具象的に説明するため陰陽五行説を導入したので
ある
陰陽五行
まず大極があり,これが陰と陽の両儀に分かれる.この天地陰陽の気が交わって万物が生ずる
のである.したがって,この生成された宇宙を構成する元素が木,火,土,金,水の五行であ
り、あらゆる事物現象をこの五つの範疇(型)に当てはめ,大自然の現象にさからうことなく思
考された形式ですべての場において共通性を有している.
東洋医学においては,この陰陽五行の基本概念を人体に当てはめ,生理,病理などの間題を理
解すると同時に経絡を基準として病証をとらえ,経絡を対象に治療を行えるよう体系化し,臨床
上において診断治療を指導しうるよう特有の理論体系を形成したものである。
●陰陽説
陰と陽は,対立と統一ならび消長と平衡(事物の運動の発展と変化過程をいう)を有し,万物
が生成変化してやまない必須の原動力であり,自然界のあらゆる事物現象の中に普遍的に存在す
るもので,陰と陽は絶対的存在というものではなく,両者の関係によって成り立つ相対的変化を
いう.ゆえに陰はあくまで陰のみでなく陰中に陽をも含み,陽はあくまで陽のみでなく陽中に陰
をも含むがごとく,互いに含有するものであることを考慮しなければならない。
●陰陽の考え
二つの事物現象に対する陰陽 ここに二つのものがあり,一方が他方に比して積極的,能動的であるほうを陽であるとし,
消極的,受動的であるほうを陰となす.
一つの事物現象に対する陰陽
明るい面,暗い面,表と裏をもって陰陽に区別される。
同一事物内にも陰陽を有する。
陰中に陽を合み,陽中に陰をも含む。
人間においては,男子は多気で陽とし,女子は多血で陰とされ,病状,脉状についても
発熱,疼痛,腫脹,脈浮数などは多く陽に属し,冷感,しびれ感,脉沈微などは多く陰に
属するがごとくである。
●素間陰陽応象大論には,つぎのごとく記されている。
(1)陰陽は天地の道なり(自然界の対立,統一の根本原則)
(2)万物の綱紀(すぺての事物は,みな陰陽の法則に従いすこしも違背できない。
綱紀:物 事のしめくくりの意)
(3)変化の父母(すべての事物の変化は,みな陰陽の法則に依拠(基づく)して発生する)
(4)生殺の本始(いっさいの生殺,消滅は,みな陰陽の法則により始まる)
(5)神明の府(自然界のいっさいの神秘の存在するところ)
(6)病を治するには必ず本を求む(人もまた自然界の生物の一つであるから,治病には必ず
この根本原則を追究しなげればならない)
以上は,宇宙のいっさいの事物の成長と発展と消滅は,すべて陰陽の法則に照して絶えず運動
をしていることを明確に指摘したものである。
●三陰三陽の用い方
三陰三陽とは太陽,少陽,陽明(三陽),太陰,少陰,厥陰(三陰)をいい,この三陰三陽の
用い方に針灸と湯液とでは少々異なるが,臨床において切り離して考えることはできない.
針灸では主として経絡(臓府)に冠し,各経絡(臓腑)の病証の部位を察知する表現として用
い,これによって虚実を定め治療の方針を考察する.
湯液では主として証の基準として用い,病状の集積する部位を察知し,これに基づいて治療の
方針を考察する。
●五行説
五行とは、木、火、土、金、水、の五要素を指している。この五行の間には、一定の法則(相
生,相尅)があり,古人はこの五行の属性(特質)の抽
象概念(個々別々の具体的表象から共通の属性を抜き出
して一般概念をつくること)に基づき,事物の相互関係
ならびに運動変化の規律を理論づける手段として用いる
のであり,とくに経絡治療を行うについてもっとも大切
な基礎条件である. 五行においても,陰陽と同しく絶対的なものでなく相
対的であって,五行の中に五行の性質が含まれている.
すなわち木経はあくまで木経のみでなく,木経の中にも
五行(木,火,土,金,水)の性質を含有している。
1)相生関係 相生関係とは,親和協調(母子)の関係をいう(互い
に親しみ仲よく力を合わせて助け合う). 五行では外周の線をもって示す間柄をいう.木は火を
生み,火は土を生み,土は金を生み,金は水を生み,水
は木を生むの間柄である. 邪の伝変(相生関係におげる考察):「難経五十難に曰
く,後より来るものを虚邪となし,前より来るものを実
邪となすの理論である」・ たとえば,木病がその母なる水の邪を受けて病む場合
を虚邪といい,子なる火の邪を受けて病む場合を実邪と
いう.五臓上では,肝病がその母なる腎の邪を受げて病
む場合を虚邪といい,子なる心の邪を受げて病む場合を
実邪という. 治法(相生関係における考察):「難経六十九難,虚すれ
ばその母を補い,実すればその子を瀉する理論である」
たとえば,木が虚したる場合その母に当たる水を補い,
実すればその子に当たる火を潟す.経絡上では,肝経虚
すれば腎経を補い,肝経実すれば心「心包」経を潟す.
経穴では,肝虚の場合「曲泉」を補い,肝実の場合「行
間」を潟す。
五行と臓腑の関係
五行 | 臓 | 腑 |
木 | 肝 | 胆 |
火 | 心 | 小腸 |
土 | 脾 | 胃 |
金 | 肺 | 大腸 |
水 | 腎 | 膀胱 |
相火 | 心包 | 三焦 |
2)相尅関係
相尅関係とは,拮抗相殺の関係をいう(互いに抑制し合う).
五行関係では,対角線をもって示す間柄をいう。
木は土を尅し,土は水を尅し,水は火を尅し,火は金を尅し,金は木を尅し,互いに制御抑制
し合う間柄である。たとえば,今ここに土が盛んになってくれば木がこれを整えようとし,水が
盛んになれば土がこれを整えようとするがごとく五行の均衡を保つことが和平で,不均衡状態が
不和である。 ここで人体に当てはめて考えてみるに,六臓六腑の経絡がおのおの過,不及なく均衡がとれて
いるところに健康があり,この均衡が破れて六臓六腑の経絡に異状の生しる状態が疾病である.
ゆえにその不調和を調べて,異状なく均衡のとれた状態に立ち直さんとして針灸を施すのが,経
絡治療の原則である. この理により,土経の虚実は,水経の虚実を呼び,水経の虚実は火経の虚実を呼び,火経の虚
実は金経の虚実を呼び,金経の虚実は木経の虚実を呼ぶことになる。
邪の伝変(相尅関係における考察)
「難経五十難に日く,勝たざる所より来るものを賊邪となし,勝つ所より来るものを微邪とな
すの理論である」
たとえば,木経が金の邪を受けて病む場合を賊邪といい,土の邪を受げて病む場合を微邪とい
う.五臓上では,肝が肺の邪を受けて病む場合を賊邪といい,脾の邪を受けて病む場合を微邪と
いう。
治方では相生,相尅の関係を合めて用いる。
以上のごとく,五行の相生,相尅におげる波及の順序次第をよく考察し,病の起困,伝変,経
絡の虚実,脉の伝変を正しく把握し,正しい取穴のもとで治療を施さなければならない。
3)勝復関係
以上の相生・相尅関係をさらに進めたものに,勝復関係というものがある.すなわち相生,相
尅(親和協調と,拮抗相殺の関係)を総合的に述ぺたものである。
類経図翼に「凡そ勝つ所あれば必ず敗るる所あり,敗るる所あれば必ず復する所あり,母の敗
るるや子必ず之を救ふ如し水の太過なれば火傷を受く,火の子出で是を倒す云々」とあり,勝つ
所とは「実」であり,敗るる所とはその実によって尅されて虚することである.すなわち水に実
邪ありて火が虚していると,火の子である土が立って水の実に制圧を加え,五行間の均衡を保と
うとする自然作用が備わっていることをいう。ゆえに治療にさいしては、火経の子に当たる土経
を補強して実経を抑制せんとする理論である。
読めない漢字がたくさんあって内容が理解しにくい
上口さんどもども!!
なんじゃこりゃ?ってな感じですか?!
難しくてすんません?(^^;