着床前診断、英では発病リスク8割の遺伝子でも認可へ

 英国で、乳がん発症の可能性がある遺伝子異常があるかどうかを受精卵診断(着床前診断)し、異常がない受精卵だけを子宮に戻し、妊娠させる試みが許可される見通しになり、「生命の選別につながるのではないか」と論争になっている。

 英紙タイムズなどによると、ロンドン大病院の医師が2夫婦の受精卵について遺伝子診断を行うことを先月末、政府機関に申請した。問題の遺伝子は「BRCA1」。この遺伝子に異常がある場合、大人になって乳がんになるリスクが60?80%高まり、卵巣がんは40%、男性の場合、前立腺がん発症のリスクがある。

 診断を希望している22歳の女性は母、祖母、曾祖母を乳がんで亡くした。同紙の取材に対して「自分ががんに直面しなければならず、娘にもそれを受け継がせるかもしれないことを恐れてきた。(この)技術はその恐怖を回避する機会を与えてくれる」と話している。

 ただ、着床前診断は生命倫理的に問題があることから、90?100%の発症リスクがある重篤な遺伝子疾病に限られていた。「今後、知能や外見など両親が希望する子供をデザインすることにもつながりかねない」という批判の声があがっている。

 政府機関は昨年5月、すでに原則的にこの診断を認めるという判断を示しており、今回の個別の申請について3?4カ月後に結論が出る見通しで、許可される可能性が高いという。

 日本には英国のような国の審査機関はない。専門医の団体である日本産科婦人科学会が会の決まりでデュシェンヌ型筋ジストロフィーなど「重篤な遺伝性疾患」に限り認めていたのを昨年、習慣性流産にまで広げることを決めた。

 不妊治療で体外受精が広く行われるようになるとともに着床前診断をどの範囲まで認めるかは世界的な問題になっている。米国では不妊治療の一環として行われている。

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