不妊治療を短縮する新しい選択肢

 体外受精(IVF)を実施するまでのステップを短縮する不妊治療によって、不妊のカップルがこれまでよりも早く、少ない費用で妊娠に至ることが新しい研究で明らかにされた。卵胞刺激ホルモン(FSH)のゴナドトロピンを用いた人工授精(子宮内受精IUI)を省略することによって、その利益が得られるという。
 米ボストンIVFおよびハーバード・バンガード・メディカルアソシエイツで実施された今回の研究では、503組のカップルを2つの群に割り付けた。一方の群の女性は、排卵を誘発するクエン酸クロミフェンを用いたIUIを3サイクル行った後、ゴナドトロピンを用いたIUI(FSH刺激サイクルとも呼ばれる)を3サイクル、その後、IVFを6サイクル行うという従来の治療を受けた。もう一方の群の女性は、クエン酸クロミフェンIUIの後、すぐにIVFのサイクルを受けた。IUIは、細く柔らかいカテーテルを子宮頚部に通して洗浄精子を直接子宮内に注入する処置で、IVFは、子宮外でシャーレを用いて卵子と精子を受精させ、受精卵を子宮内に戻す処置である。

 その結果、ゴナドトロピンIUIを省略した群では、妊娠までに要した平均期間が8カ月であったのに対し、従来の不妊治療プログラムを受けた女性では11 カ月であった。さらに、短縮治療を受けた群では保険データに基づく平均出産費用が9,800ドル(約94万円)低く、カップル自身の出費も平均2,624 ドル(約25万円)の節約になることも判明。短縮治療群の女性は多胎児を妊娠する比率が低かったことが低コストにつながったという。

 全体では、21〜39歳の被験者のうち64%が出産に至り、内訳は短縮治療群では256人中171人、長期治療群では247人中150人であった。この研究は、医学誌「Fertility and Sterility(妊孕 [よう] )性と不妊)」オンライン版に6月16日掲載された。

 米国生殖補助技術学会(SART)のElizabeth Ginsburg氏は、「今回の研究は極めて重要なものであり、原因不明の不妊患者に排卵誘発を用いた人工授精を試みる回数の減少につながる可能性がある。このような短縮治療を採用することによって、多くの患者が短期間に少ない費用で妊娠することが可能になると思われる」と述べている。

(Visited 3 times, 1 visits today)