8つ子誕生が論議呼ぶ

090209【2月8日 AFP】米カリフォルニア(California)州で8つ子を出産し、すでにいた6人と合わせ14人の子どもの母親になったナディア・スールマン(Nadya Suleman)さん(33)が、体外受精(IVF)を行っていたことで、米国では生殖補助医療に対する規制強化を求める論調が強まっている。

■8つ子とそれまでの6人、すべて体外受精

 スールマンさんが1月、8つ子を出産した際には、世論は「心温まる話題」として捉えていた。しかし、スールマンさんの背景が知られるようになり、また医療専門家が妊娠を支援していたことが明らかになると、世論の歓迎ムードは一転、怒りに変化した。

 スールマンさんは今回の出産の前、すでに7歳を年長とする6人の子どものシングルマザーだった。8つ子も含め、子どもたち全員の妊娠は体外受精によるもの。双子以上の多胎妊娠は早産や誕生時の低体重、神経系の異常などを招くリスクが高いため、医療関係者の間では非難の声が広がっている。

■リスクの高い多胎妊娠に医療界が警告

 英国の専門家で、英王立産科婦人科学会(Royal College of Obstetricians and Gynaecologist)の広報担当を務めるピーター・ボーエン・シンプキンズ(Peter Bowen-Simpkins)氏は「受胎に関してわたしが聞いたことのある限り、最も無責任な行為だ」と批判する。
 
 米生殖医学会(American Society for Reproductive Medicine、ASRM)のショーン・ティプトン(Sean Tipton)広報担当も「出産する人数が多いからといって、それが医学の勝利だとは考えるべきではない」と警告する。

 ボーエン・シンプキンズ氏によると英国では、政府の直轄機関「「ヒト受精・胚機構(Human Fertilisation and Embryology Authority、HFEA)」が体外受精については厳しく監督しており、体外受精で一度に子宮内に戻す受精卵(胚)の数を2個までに限定している。2011年以降、規制はさらに強化され、胚の移植は1個に限られる予定だ。

■米国以外では厳しい規制

 各国では、フランスでは匿名の精子提供は許されていない。また単身女性は体外受精を受けることができず、申請が認可されるのは異性愛のカップルだけとなっている。イタリアでも、60代の女性が相次いで妊娠し議論を呼んだ後、体外受精治療に対する規制が強化された。

 しかし米国では体外受精に関する規制は存在せず、法整備や監督は州ごとに異なるが多くの場合、最小限かまったくない状態だ。

 ASRMの指針では、スールマンさんの年齢の女性には、移植する胚は2個までにすべきとなっている。年齢が上がり妊娠の可能性が減るごとに移植しても良いとされる胚の数は増え、35-37歳になると3個、37-40歳になると4個、40歳以上は5個までが可とされている。

 米ペンシルバニア大学(Pennsylvania University)生命倫理学センターのアーサー・カプラン(Arthur Caplan)所長は、不妊治療で近年、トラブルとなる例も増えていると指摘する。「すでに亡くなってしまった男性と女性の精子と卵子から子どもを作ろうとした例もいくつかあったが、これは事実上、最初から両親のいない子どもを作る行為だ。米国の生殖補助医療ビジネスは、あまりにビジネス化しすぎてしまっている」

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