先天性欠損率は不妊治療によって異なる

先天性欠損(birth defect)は特定の不妊症治療後により多くみられるが、生殖補助医療(ART)自体が原因なのか、生物学的な受胎防止(biology preventing conception)によるものかは不明であることが、オーストラリアの新しい研究で示された。

米医学誌「New England Journal of Medicine」オンライン版に5月5日掲載された今回の研究で、オーストラリア、アデレード大学ロビンソン研究所准教授のMichael Davies氏らは、南オーストラリアでARTによる出生児6,100人超のデータを収集し、30万人超の出生児レジストリと比較。不妊症治療に関連する先天性欠損リスクを非補助妊娠の場合と比べて検討した。また、不妊治療歴のある女性の“自然”妊娠についても検討した。

研究の結果、全体で、ART群の先天性欠損リスクは8.3%であり、非補助妊娠群では5.8%であった。欠損には、口蓋裂、心臓奇形、消化管奇形、食道奇形があった。体外受精(IVF)における先天性欠損リスクは7.2%、卵細胞質内精子注入法(ICSI)では9.9%であった。排卵刺激のため自宅でクエン酸クロミフェンを用いていた女性では先天性欠損リスクが3倍であった。

Davies氏は「治療はかなり安全と思われるが、現在進行中の他の研究とともに早急な調査を要する有意なリスクがあることは無視できない。IVFの過度のリスクは年齢や体重など患者の特徴により説明できるが、ICSIのリスクは説明できない。不妊歴は治療にかかわらずリスク増大と関連し、根本的な患者因子による可能性がある」と述べている。

米ノースショア大学病院(ニューヨーク州)のAvner Hershlag博士は、「ARTを用いた場合に先天性欠損児が生まれるリスクは用いない場合に比べ2.5%のみ高かった。年齢などの因子を考慮すれば、IVFによるリスク増大はない。これは患者にとって良いニュースである。体外受精児の90%超は正常であり、欠損の多くは非常に軽微で治療可能である」と述べている。

米国生殖医療補助委員会(SART)委員長のGlenn Schattman氏は、「ICSIを行わずIVFで受胎した小児の調整後のオッズ比では、先天性欠損に有意差を認めず、凍結受精卵を用いた場合は自然に受精した場合に比べ先天性欠損のリスクが高くない」と述べている。

http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=664464

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