A型肝炎が過去3年で最多、「食べ物に要注意」と感染研

 A型肝炎の患者が3月上旬から増え始め、4月上旬までの患者報告数が2007-09年の過去3年に比べ突出して多いことが、国立感染症研究所感染症情報センターのまとめで分かった。同センターの岡部信彦センター長は、「これからのシーズンは、食中毒と併せて食べ物や飲み物に注意が必要だ」と呼び掛けている。

 A型肝炎は、感染症法で患者を診断した医師に全数報告が義務付けられている四類感染症。同センターの集計によると、年明けから4月上旬までの患者報告数は07年が41人、08年が52人、09年が25人だったが、今年は111人と突出して多い。しかも111人のうち81人は、3月8日-4月11日の1か月余りに報告された。

 A型肝炎は、2-7週間の潜伏期間の後に発熱、全身倦怠感、嘔吐、黄疸などを発症する。多くは1-2か月で回復するが、まれに劇症化して死亡する。症状は年齢が上がるほど重くなり、小児では感染しても8割以上が症状が出ないが、成人では75-90%が発症。致死率も、全体で0.1%以下なのに対し、50 歳以上では2.7%と高い。
 A型肝炎ウイルスは糞便中に排泄され、糞口感染によって伝播する。発生状況は衛生環境に左右され、日本では糞便で汚染された水や食べ物による大規模な集団発生はまれで、魚介類の生食による経口感染が多い。3月8日-4月11日に報告された81人のうち77人は経口感染と推定されており、このうち35人はカキの喫食で感染したと見られている。

 同センターでは予防法に、汚染された水や食べ物を口にしないこと、患者と接する際の適切な糞便処理や手洗いを心掛けることなどを挙げている。

■手足口病が多発、「早期受診が重要」
 乳幼児を中心に例年、夏に流行する手足口病も多発している。3月8日-4月11日の全国約3000か所の小児科定点医療機関当たりの患者報告数は、毎週 0.37から0.43で推移。05-09年の同時期の定点当たり報告数を見ると、最も多い07年でも0.29が最高で、おおむね0.1前後で推移している。岡部センター長は「今年は例年に比べ、スタートが早い」と指摘している。しかも今年は、重症化して無菌性髄膜炎や脳症を引き起こすエンテロウイルス 71の検出が、広島市などで報告されているという。

 手足口病は、3-5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜や手のひら、足の裏などに水疱性発疹が出現するのが特徴。岡部センター長は、発熱に加えて吐き気、発疹などの症状がある場合は、医療機関を早期に受診するよう呼び掛けている。