asahi.comによると
加齢による不妊に悩む女性に対して、本人の卵巣から卵子の素になる細胞を取り出し、一部を卵子に移植して若返らせる方法で、初めての赤ちゃんが生まれた、と米国の企業が発表した。妊娠の可能性が高まるとしているが、効果や安全性について疑問視する声も上がっている。
発表したのは、米国に本部を置き、世界の不妊治療クリニックに技術提供をしている「オバ・サイエンス社」。年齢のわりに卵子の質が悪く、体外受精に何度も失敗していたカナダの34歳の母親に試みて、男児が生まれたという。
卵子の素になる細胞から、細胞に必要なエネルギーを作るミトコンドリアを取って発育不良の卵子に移植する方法で「卵子や受精卵の質が悪い人の妊娠率を上げられた」と説明している。同社によると、カナダでも複数妊娠例があるほかに、トルコでも27歳から41歳の8人に実施して2人の女性が妊娠したという。
北海道大の石井哲也教授(生命倫理学)は、今回の手法は、効果や安全性に関する科学的な裏付けが欠けていると指摘する。「生まれてきた子どもへの長期的な影響も懸念され、認める場合でも臨床試験で慎重に行うべきものだ。安易に取り入れるクリニックが日本でも出てくれば大きな問題になるだろう」と話す。
卵子の若返りについては、若い第三者の女性から卵子提供を受け、そのミトコンドリアを発育不良の卵子に移植する方法を試みたとする論文が1997年に発表された。米国で複数の赤ちゃんが生まれたとされる。効果が疑問視されたほか、倫理面、安全面での懸念が指摘され、米食品医薬品局(FDA)は研究を凍結している。