妊娠中の魚油サプリ摂取は産後うつ病や子の認知力向上に効果なし

ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する魚油サプリメントを妊娠女性が摂取しても、産後うつ病の減少や、生れてくる子の思考(認知)力および言語の発達向上などの効果はみられないとする研究が、米国医師会誌「JAMA」10月20日号に掲載された。

 オーストラリア、女性・小児健康研究所(Women’s and Children’s Health Research Institute、アデレード)のMaria Makrides氏らによる今回の研究では、妊娠21週未満の女性2,399人を、DHA 800mgを含有する魚油サプリメントを毎日摂取する群と、DHAを含有しない植物油カプセルを摂取する群に無作為に割り付けた。被験者は出産まで摂取を継続した。エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)およびベイリー乳幼児発達検査(BSID)を用いて、母親のうつレベルおよび出生児の認知・言語の発達をそれぞれ評価した。

 出産後6カ月間の産後うつ病の比率はDHA群では9.67%、非DHA群では11.19%で、両群間に有意差はみられなかった。新たなうつ病の発症数にも群間差はなかった。また、生後18カ月の時点で、母親がDHAを摂取した幼児としていない幼児の間に発達スコアの差はみられず、運動発達や社会情緒的行動などのスコアにも差はみられなかったという。なお、DHA群では新生児集中治療室(NICU)に入院した乳児が、対照群に比較して有意に少なかった。これはDHA群の早産が少なかったことによるものと考えられる。

 同誌付随論説の著者である米ハーバード大学医学部(ボストン)准教授のEmily Oken博士は、DHA群での早産率の低さは大きなベネフィット(便益)であると述べている。また、今回の研究で用いたベイリー乳幼児発達検査は、就学前後にならないと表面化してこない発達の欠陥を予測するには不十分であると指摘。魚油サプリメントの安全性を強調するとともに、妊娠女性は水銀含有量が少なくDHA含有量が多い魚、あるいはサプリメントにより1日200mgのDHAを摂取することを推奨している。一方、米マイアミ大学ミラー医学部のGene Burkett博士は、水銀含有量の少ない魚を食べることを勧めており、サプリメントは魚の代用とはならないとしている。

 健康食品業界団体Council for Responsible NutritionのDuffy MacKay氏はこの知見に対し、「今回の研究では、妊娠初期の母親のDHAの摂取状態や、うつ病の評価を実施した時期がわからない。また、幼児を評価した時点でのDHAの摂取状況もわからない」と指摘し、明確な結論を導くことはできないと述べている。

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