高齢な父親ほど子どもの遺伝子の新たな変異が起き易い

子どもの遺伝子変異で親から受け継いだものではない、まったく新たな変異が起きる最大の要因は、受胎時の父親の年齢にあるとする研究論文をアイスランドのゲノムデータ企業「デコード(deCODE)」などのチームが22日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 アイスランド、デンマーク、英国の共同チームは、親の遺伝子にはないゲノム配列の変化を見つけるために、両親と子どもの親子3人計78組と対照群数百組のゲノム解析を行った。その結果、遺伝子に起こる新生突然変異の発生率の増加は、要因の97.1%が受胎時の父親の年齢にある可能性が示された。一方、新生突然変異の発生率の増加と、受胎時の母親の年齢には関連は見いだされなかった。
  
 論文の分析部分を執筆した米ミシガン大(University of Michigan)のアレクセイ・コンドラショフ(Alexey Kondrashov)氏によると、現在の新生児は平均して約60の小規模な新生突然変異を持って生まれてくる。父親が20歳の場合、新生突然変異の平均数は25だったが、40歳の場合では65だった。

 研究によると、新生突然変異が起こる確率は受胎時の父親の年齢が上がるほどに上昇し、父親の年が16歳違うと発生率は倍になった。つまり20歳の父親に比べて36歳の父親のほうが、子どもに新生突然変異が起こる確率が2倍になるということになる。

 過去の研究では遺伝子の新生突然変異と、自閉症や統合失調症との関連が指摘されており、またそうした疾患と父親の年齢について統計的関連性が示されていた。論文の共著者であるデコードのカリ・ステファンソン(Kari Stefansson)最高経営責任者(CEO)は「近年の自閉症例の増加の一部は、父親の高年齢化によって説明しうる」と語っている。

 またミシガン大のコンドラショフ氏は、これは子どもを持つに望ましいとされる年齢を見直すよう促す結果で、若い男性が後のために精子を冷凍保存することは「賢い個人の決断」だろうと述べている。

 欧米諸国ではここ数十年、男性が父親になる年齢が上昇しており、第1子誕生時に40歳を超えている父親も増えている。例えばアイスランドでは受胎時の父親の平均年齢は、1980年には27.9歳だったが、2011年には33歳となっている。

 一方、今回研究が行われた新生突然変異は精子が生成される際など細胞分裂の過程で起きるもので、ダウン症など母親の年齢と関連付けられている染色体疾患における変異過程とは異なる。新生突然変異とは対照的に、親から受け継ぐ遺伝子変異の確率は父親からも母親からも等しくなっている。

 また良い面から見れば、新生突然変異は人間の進化に不可欠で、われわれが環境の変化に適応していくことを可能にしている。

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