夫婦以外の精子・卵子使った体外受精容認へ

 不妊治療を行う医師らでつくる日本生殖医学会(岡村均理事長)は、夫婦以外の第三者から提供された精子・卵子を使った非配偶者間の体外受精を認める方針を決めた。

 兄弟姉妹や友人からの精子・卵子提供も認める。学会の倫理委員会は来年3月までに実施条件を定めた指針を策定する。

 非配偶者間の体外受精は、厚生労働省の生殖補助医療部会が2003年、「匿名の第三者」に限り精子・卵子提供を認める報告書をまとめたが、その後の法制化は進んでいない。学会による初の指針が策定された場合、国の規制がないまま、非配偶者間の体外受精の実施が医療現場で一気に進む可能性も出てきた。

 倫理委員会は昨年3月から、9回にわたりこの問題を検討。自分の精子や卵子を使って子どもを得ることができない夫婦を対象に、精子・卵子の提供を受けることを認めることで合意。「匿名の第三者」だけでは精子や卵子の提供が得られにくいため、提供者の範囲を兄弟姉妹や友人にも広げることにした。

 さらに〈1〉精子・卵子そのものの提供は無償とするが、交通費や治療費などの実費は補償する〈2〉生まれた子供が将来希望すれば、誰が提供者なのか告知する??ことなども決めた。

 倫理委は今後、実施施設の条件や、カウンセリング体制の在り方などを協議し、来年3月の学会理事会に報告する。

 非配偶者間の体外受精をめぐっては、長野県の根津八紘医師が昨年7月、160組の夫婦に行い、124人の子どもが生まれたと公表。米国などに渡航し、精子や卵子の提供を受けて妊娠するカップルも、1000組以上に上ると見られる。

 全国21の民間不妊クリニックで作る「日本生殖補助医療標準化機関」も今年7月、兄弟姉妹や友人の精子・卵子を使った体外受精の実施を認める指針を策定。夫婦2組で実施されたことを公表している。

 日本生殖医学会の倫理委員長を務める石原理・埼玉医大教授は、「非配偶者間の体外受精に関する法制化のめどがたたない間に、治療を希望する夫婦の高齢化が進んでいる。必要な法整備についても国に訴えたい」と話している。

(Visited 1 times, 1 visits today)