妊娠中の授乳は流産と無関係

 授乳をすると子宮が収縮し流産になるとして、明確な根拠がないまま国内の産科医療機関で中止を指導されることの多い妊娠中の授乳について、浜松市の産科医が、授乳は流産と無関係とする論文を日本産科婦人科学会の学会誌に発表した。

 石井第一産科婦人科クリニック(浜松市)の石井広重院長は、96〜00年に同院で第2子の妊娠が確認された20〜34歳の女性のカルテをもとに分析。第1子が満期産(妊娠37週以上42週未満に出産)で流産の経験がない人で、授乳中だった110人と、授乳していなかった774人を比較。授乳群で流産は全体の7.3%に対し、授乳しない群は8.4%で、有意な差はなかった。石井院長は「母乳育児は母子双方にメリットがあり、禁止はすべきでない」と話す。

 日本赤十字社医療センターの杉本充弘周産母子・小児センター長は「データに基づき、無関係とはっきり示した論文は国内では初めて。中止を指導していた施設は方針転換した方がよい」と話している。

妊娠高血圧症候群を早期発見へ 岡山大病院が研究

 岡山大病院周産母子センター(岡山市北区鹿田町)の増山寿准教授(周産期医学)らのグループは、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の早期診断法の研究開発に着手する。早産や胎盤はく離、胎児の発育遅延などの重症化を防ぐことが狙い。12月からスタートし、5年後に200症例の数値データ化を目指す。

 増山准教授らは、妊娠初期(15週まで)に胎盤が形成される際、血管をつくる血管新生因子が関係していると想定。中でも血しょう、血清内の3種類のタンパク質が同症候群に関与している可能性が高いとみて、妊娠16〜29週の妊婦に計3回、血液検査を行い、タンパク質濃度の変化を分析する。

 東京大、日本大、自治医科大もほぼ同時期に研究を始める計画で、相互の連携も図る。

 高齢出産(35歳以上で初産)などハイリスク患者の増加や産科医不足など周産期医療を取り巻く環境は厳しい。増山准教授は「(同症候群の)適切な治療を早期に行うことで重篤な合併症を防ぐことが可能。産科医の少ない県北などのハイリスク患者を連携してケアする仕組みづくりにもつなげたい」としている。

岡山の専門医らNASH研究会を発足

 脂肪肝から自覚症状のないまま肝硬変、肝がんへ進行するNASH(ナッシュ)(非アルコール性脂肪肝炎)の診断・治療法を研究する岡山県内の専門医や栄養士らが「岡山NASH研究会」を発足させた。急増するNASHの危険性を知ってもらうための市民公開講座(山陽新聞社後援)を12月13日、岡山コンベンションセンター(岡山市北区駅元町)で開く。

 NASHは飲酒歴がない(アルコール摂取日量20グラム=日本酒1合程度=以下)にもかかわらず、アルコール性肝障害によく似た症状を示す。脂肪肝から肝炎を引き起こし、肝組織が線維化、壊死(えし)すると、腹水や黄疸(おうだん)が現れ、回復困難な肝硬変の状態になる。

 早くからNASHへの警告を発してきた川崎病院の山田剛太郎医師(前副院長)が代表世話人となり、岡山大病院の山本和秀副院長(消化器・肝臓内科教授)、川崎医大の日野啓輔教授(肝胆膵(かんたんすい)内科)らとともに研究会設立を呼びかけた。

 市民講座では、NASHに起因するとみられる肝硬変から肝臓移植に至った本紙の池本正人編集委員(月曜日付朝刊に「ケースナンバー187」連載中)が体験を話し、研究会の専門医が診断法や食事・運動療法、薬物療法について解説する。午後0時半から。無料。問い合わせは川崎病院肝臓・消化器病センター(086―225―2111)