「病院での不妊治療」ではなく、「人生、生活の一部としての不妊治療」を伝えたい。そう願った看護の専門家やカウンセラーが本をまとめた。「あなたらしい不妊治療のために」。不妊治療を決めたときから始まる悩みや複雑な感情とどう向き合うのか。望んだ結果が得られなくても、納得できる治療の受け方のアドバイスが盛り込まれている。
編者は、聖路加看護大教授の森明子さん、不妊カウンセラーの浜崎京子さん、ジャーナリストのまさのあつこさんの3人。
医師ではない、看護と体験者の視点にこだわった。不妊カウンセリングについての対談では、医療機関の選び方、医師とのつきあい方に加えて、治療をやめる時期の考え方に触れ、「自分なりの治療の区切りの目安を持っておくことが大事」とした。
10人の体験談は示唆に富む。保険のきかない連日の注射、全身麻酔による採卵、職場に隠しての通院に疲弊し、「不妊治療は負け続けるギャンブルだ」と思った女性の話。別の女性は、不妊治療を始めてうつ状態になったが、「妊娠できなくても自分の人生に悔いのないように」と思い始めたら、自然妊娠したという話。待合室の重苦しい雰囲気がつらかったという男性は、妻との治療に対する考え方の違いに戸惑い、悩んだ体験談を寄せた。
森さんは「不妊治療は、始めるとのめりこんでしまいがち。これから受けようという人も、今受けている人も、ぜひ立ち止まって考えてみてほしい」と話す。
(Visited 2 times, 1 visits today)