AFPBB Newsによると
妊婦による喫煙は、発育中の胎児のDNAに科学的な変化を生させ、子どもを危険にさらす恐れがあるとの研究論文が3月31日、発表された。6000組以上の母子を対象とする大規模調査に基づく結果だという。
妊婦の喫煙をめぐっては、死産のほか、新生児に先天的な口蓋裂、肺病、神経行動学的な問題などの原因となる恐れがあるため、医師らは長年、妊娠中の喫煙を避けるよう警告してきた。
こうした警告にもかかわらず、米国では妊娠中の女性約12%が喫煙を続けるという。タバコの煙に含まれる化学物質は、子どもを守る胎盤を通過して胎児へと到達する。
研究チームは、喫煙による胎児のDNAの変化がどのような仕組みで起きるのかを調べるため、小規模な先行研究13件のメタ分析を行った。これらの先行研究の一部では、「メチル化」としても知られるDNAの化学的変化と喫煙との関連性が示唆されていた。
メタ分析で対象となった新生児6685人のうちの約13%は、妊娠中に日常的に喫煙していた母親から生まれた子どもだった。妊娠中に時折喫煙していたか、妊娠初期に禁煙していた母親を持つ子どもは同25%だった。
研究チームはまた、日常的な喫煙者のグループで「DNAが化学的に変化した箇所を6073箇所」特定。非喫煙者の母親を持つ新生児のものと「異なっている」ことを確認した。
米科学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)」に掲載された研究チームの論文によると「これら特定箇所の約半数は、特定の遺伝子に関係している可能性がある」という。
米国立環境衛生科学研究所(NIEHS)の疫学者、ボニー・ジュバート(Bonnie Joubert)氏は、「多くは発生経路に結びついていた」と述べ、肺や神経系の発達、喫煙に関連するがん、口唇裂や口蓋裂などの出生異常などに関連する遺伝子で変化が認められたと指摘した。
これらのDNAの変化は、出産後に採取された臍(さい)帯血のサンプルで確認された。母親が妊娠中に喫煙した頻度が低いほど、この変化がより不明確だった。
また、妊娠中に喫煙していた母親を持つ、より年長の(平均年齢6歳の)子ども数百人のグループでも、一部のDNAの変化が依然として明確に残っていることが、別の分析で明らかになっている。
米ユタ大学(University of Utah)のクリストファー・グレッグ(Christopher Gregg)助教(神経生物学・解剖学・人類遺伝学)は、今回の研究における規模の大きさが、「母親の年齢や社会・経済的地位などの潜在的な外的影響(交絡)因子をより効果的に排除するための」助けになると指摘。結果は「大きな影響力」を持つと評した。同助教は、今回の研究には参加していない。
「妊娠中の女性にタバコは禁物という考えは十分に確立されているが、今回の研究結果は、妊娠中の喫煙が、子どもの小児期まで残存する永続的な影響をゲノム(全遺伝情報)上に残すことを明らかにするとともに、これらの影響を特に受けやすいゲノム内の位置と遺伝子を特定している」とグレッグ助教は説明した。
米ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)のマイケル・カウリー(Michael Cowley)助教(生物科学)は「これらの影響が疾病リスクの増加に実際に関与しているかどうかは、今回の研究からは判断できないが、喫煙に関連する後成的変化の機能的関連性が今回実証されたことは重要だ」と指摘。「喫煙に関連する後成的変化と子どもの疾病との間の因果関係を証明するには、さらに研究を重ねる必要があるが、今回の研究はそれを構築するためのしっかりとした基盤を提供している」と述べた。