白血病ウイルス感染者108万人

 母乳を通じて母子感染し、白血病などを引き起こす可能性がある成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)について厚生労働省研究班が約20年ぶりに実施した調査で、感染者の地域別割合がもともと高かった九州で減少し、関東や中部、近畿の大都市圏で増加したことが27日、分かった。

 国内の感染者数は約108万人と推計。旧厚生省研究班が1988〜90年度にまとめた調査の約120万人と比べ大きな変化はなかった。これまで全国的な対策は取られておらず、子供への感染を防ぐ取り組みが急務となりそうだ。

 研究班班長の山口一成国立感染症研究所客員研究員は大都市圏での割合増加について、感染者が多い九州からの人の移動が背景にあると指摘。「妊婦への抗体検査や授乳指導を実施している自治体は一部に限られ、感染者総数もあまり減少していない」と話した。

 HTLV1はATLと呼ばれるタイプの白血病や、歩行障害などが出る脊髄症(HAM)の原因となる。ATLの発症率は3〜5%。根本的な治療法はなく、年間約千人が亡くなっている。

 今回の調査は、2006〜07年に初めて献血した全国の約119万人を対象に実施、3787人の感染が確認された。

 感染者の地域別割合は、九州が前回調査の50・9%から41・4%に減少。一方、関東は17・3%(前回10・8%)、中部8・2%(同4・8%)、近畿20・3%(同17・0%)で、いずれも前回より増加した。

不妊治療を短縮する新しい選択肢

 体外受精(IVF)を実施するまでのステップを短縮する不妊治療によって、不妊のカップルがこれまでよりも早く、少ない費用で妊娠に至ることが新しい研究で明らかにされた。卵胞刺激ホルモン(FSH)のゴナドトロピンを用いた人工授精(子宮内受精IUI)を省略することによって、その利益が得られるという。
 米ボストンIVFおよびハーバード・バンガード・メディカルアソシエイツで実施された今回の研究では、503組のカップルを2つの群に割り付けた。一方の群の女性は、排卵を誘発するクエン酸クロミフェンを用いたIUIを3サイクル行った後、ゴナドトロピンを用いたIUI(FSH刺激サイクルとも呼ばれる)を3サイクル、その後、IVFを6サイクル行うという従来の治療を受けた。もう一方の群の女性は、クエン酸クロミフェンIUIの後、すぐにIVFのサイクルを受けた。IUIは、細く柔らかいカテーテルを子宮頚部に通して洗浄精子を直接子宮内に注入する処置で、IVFは、子宮外でシャーレを用いて卵子と精子を受精させ、受精卵を子宮内に戻す処置である。

 その結果、ゴナドトロピンIUIを省略した群では、妊娠までに要した平均期間が8カ月であったのに対し、従来の不妊治療プログラムを受けた女性では11 カ月であった。さらに、短縮治療を受けた群では保険データに基づく平均出産費用が9,800ドル(約94万円)低く、カップル自身の出費も平均2,624 ドル(約25万円)の節約になることも判明。短縮治療群の女性は多胎児を妊娠する比率が低かったことが低コストにつながったという。

 全体では、21〜39歳の被験者のうち64%が出産に至り、内訳は短縮治療群では256人中171人、長期治療群では247人中150人であった。この研究は、医学誌「Fertility and Sterility(妊孕 [よう] )性と不妊)」オンライン版に6月16日掲載された。

 米国生殖補助技術学会(SART)のElizabeth Ginsburg氏は、「今回の研究は極めて重要なものであり、原因不明の不妊患者に排卵誘発を用いた人工授精を試みる回数の減少につながる可能性がある。このような短縮治療を採用することによって、多くの患者が短期間に少ない費用で妊娠することが可能になると思われる」と述べている。

08年の出生率1・37

 女性1人が生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率が、2008年は1・37だったことが3日、厚生労働省の人口動態統計(概数)で分かった。07年と比べ0・03上がり、過去最低の1・26を記録した05年から3年連続で上昇した。都道府県別では最高が沖縄の1・78で、最低は東京1・09。

 厚労省は、晩婚化を背景に30代の出産が増え続けていることや、減少していた20代の出産が下げ止まり傾向にあると分析。担当者は「ただ、こうした推移は好景気に支えられてきた面もあり、今年以降は金融危機による不景気の影響を注視する必要がある」としている。

 一方、死亡数は114万2467人(前年比3万4133人増)となり、戦後の1947年以降で最多。出生数から死亡数を引いた自然増減数もマイナス5万1317人で前年(マイナス1万8516人)を大きく下回り、過去最大の自然減となった。

 合計特殊出生率 15〜49歳の女性の人口と、それぞれが1年間に産んだ子供の人数を基に、年齢別の出生率を算出し、合計した数値。1960年代から70年代前半までは2前後で推移していたが、75年に2を割り込んで低落傾向になり、2005年には過去最低の1・26を記録した。晩婚化や未婚化などが原因とみられる。人口維持に必要とされる水準は2・07。