男の不妊症、手術で精巣から精子採取

精液検査で精子が全く見つからない場合、無精子症と診断される。

 さいたま市の会社員男性Bさん(38)は2009年秋、婦人科クリニックで受けた精液検査で、無精子症と告知された。自分で情報を集め、独協医大越谷病院(埼玉県越谷市)泌尿器科教授で、男性不妊が専門の岡田弘さんを受診した。

 無精子症の原因には、精巣で精子が作られないか量がわずかしかないケースと、精巣の働きは正常だが精液の通り道の精管に問題があるケースがある。

 患者の約3割は、精管に問題があるタイプ(閉塞性)だ。Bさんは、触診やホルモンの血液検査などから、精巣では精子が作られているが、精管が生まれつきないことがわかった。

 岡田さんは、Bさんの陰のうにメスを入れ精巣の組織を一部取る手術を行い、そこから精子を採取。妻(37)の卵子と体外で顕微鏡を見ながら受精させた後に子宮に戻す顕微授精を行い、長男(1)を授かった。

 Bさんは「無精子症とわかり、精神的にがくんと来たけれど、原因がわかったことを前向きに受け止め、夫婦で迷うことなく治療に取り組んだ」と話す。

 精巣は正常だが精液の通り道に問題があるBさんのようなタイプは、精巣からほぼ確実に精子を採取でき、不妊治療につなげることができる。これに対し、無精子症患者の約7割は、精巣の働きそのものに問題があるタイプ(非閉塞性)で、治療が難しい。

 顕微鏡を使った手術で精巣の内部を見て、精子がいないかどうかを調べ、見つかれば採取する。精子回収率は非閉塞性の場合、約4割だ。年齢が若い(35歳未満)ほど回収率が良いとの研究もある。

 精子を採取する手術は、精巣が萎縮し手術後のホルモン分泌に支障が出る危険性を伴う。岡田さんは「極力1回で、必要な組織だけを的確に採取する技術が必要だ」と話す。

 2泊3日の入院で、全身麻酔で行う。局所麻酔で、日帰りで行う施設もある。

 精子を採取する手術には保険がきかず、同病院の場合、事前の検査も含め約50万円かかる。不妊治療の公的助成の対象にはなっていないため、不妊治療の一環として対象に含めるよう求める声もある。

 手術で精子が採取できなかった患者には、ホルモン剤で精巣の働きの改善を目指す試みも同病院や山口大病院で行われている。

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