89%が不妊治療はキャリアの支障

日本産婦人科学会の調査によると、
学会は昨年9〜12月に全国15カ所の不妊治療専門施設に通う女性にインターネットでアンケートし、835人(平均年齢37歳)から回答を得た。
 このうち、働いている807人の89%が治療はキャリアの支障になると答えた。一方、94%はキャリアより不妊治療を優先すると回答。必要とする支援は、治療費の補助、時短・フレックスタイム制の導入がいずれも約7割を占めた。一方、正社員からパートタイムになるなど就業形態の一時的な変更を求めた人は2割にとどまった。
 また、55%は職場に不妊治療を受けていることを伝えていなかった。理由として、約6割が「申し出てもメリットがない」と答えた。一方、申し出た女性の約7割は「職場の理解を容易に得られた」と回答した。
 不妊治療では、採卵や夫婦生活をもつタイミングなどは、卵子の成熟度などを見ながら直前に決める。1日ずれるだけでも結果が大きく変わってくるため、長期的な予定が立てにくい。一方、1回の治療は半日程度で終わる。そのため多くの女性は、長期的な休みより、治療に合わせて自由に休みが取れる仕組みを求めているとみられる。
 学会の調査小委員会委員長の明楽重夫・日本医科大教授は「治療のために月数日、不定期に半日程度休める仕組みや、女性が治療を申し出やすい環境を整えることが必要だ」と話す。

2016年に体外受精で生まれた子どもは約5万4千人で、約18人に1人を占めている。

着床前スクリーニング

ポストセブンの記事によれば、

神戸の「大谷レディスクリニック」が「着床前スクリーニング」の実施によって、高齢出産の流産率を引き下げることに成功した。
日本産科婦人科学会が着床前スクリーニングを原則として認めていない中で、559人におよぶ患者にスクリーニングを実施。
大谷レディスクリニックでは2011年2月から2014年7月にかけて559人にスクリーニングを実施した。平均年齢は40.4才で、その大半が流産や体外受精を何度も経験していた。スクリーニングで正常な受精卵とされ、子宮に戻されたのは327人で、うち220人ほどがすでに出産したという。
女性のスクリーニングを行わなかった体外受精における着床率は20.9%なのに対し、スクリーニングを行った女性の着床率は46.6%と約2.2倍に。流産率は、スクリーニングを行わない場合は40.8%だが、スクリーニングを行うと11.1%と約4分の1になる。
それならば、なぜ日産婦は着床前スクリーニングを認めてこなかったのか。その理由の1つは染色体をスクリーニング検査することで、ダウン症をはじめとする染色体に特徴のある障害を判別できたり、生まれてくる子が男か女かがわかったりすることだ。スクリーニングを行うことがすぐに「障害を有する命の選別」や「男女産み分け」に繋がるわけではないが、生命倫理上の観点から日本の医学界では導入が見送られてきた。

大谷レディスクリニックの大谷徹郎院長に話を聞いた。

 なぜ禁じられている着床前スクリーニングを実施しているのですか。

「私自身も子供ができたのが遅く、私と妻が37才のときでした。32才から不妊治療を始め、5年後にようやく子供を授かりました。長い不妊治療を経験した妻は深い悩みを抱え、私自身も“今までなんのために生きてきたのか”と人生を恨んだものです。だからこそ、不妊に苦しめられるかたがたの気持ちがよくわかります。その苦しみを少しでも減らし、妊娠率を上げたいという気持ちが原動力です」

 染色体を検査することは「命の選別」に繋がりかねないという批判もあります。

「着床前スクリーニングの最大の目的は母体の保護です。それを間違えないでほしい。流産は精神的だけでなく、母体に与える影響が少なくありません。2度繰り返すことを反復流産、それ以上繰り返すことを習慣流産といいますが、3度流産した場合の、4度目の妊娠の流産率をご存じですか? おおよそ4割です。年齢が上がれば、さらに流産率は上がります。それらの流産の多く(約71%)は、染色体に異常のある受精卵が原因です。
染色体異常のなかでも最も生まれる可能性が高い21番トリソミーの染色体異常(ダウン症のこと)を持つ受精卵でも、着床する確率は20%くらいで、さらにその内で20?30%だけが出産に至ります。つまり、その受精卵を子宮に戻しても94?96%は着床しないか、流産するのです。
産婦は『命の選別』といいますが、それなら、出生前診断の羊水検査は命の選別にならないのでしょうか。日産婦も認めている羊水検査で調べるのも染色体異常です。着床前スクリーニングの場合、検査の対象は『前胚』であり、法律で人間だと規定されている『胎児』以前の段階です。ところが、同じように染色体異常を調べる羊水検査は妊娠約15週前後で行われるので、これは胎児を検査しているわけです。
障害があるとわかっていても赤ちゃんを産み、育てる行為は尊いものです。しかし同時に、すでに日本では羊水検査によって“障害を認知した”あとの中絶が実質的に認められている現実を忘れてはなりません。
着床前スクリーニングは、子宮に戻す前の受精卵に異常を見つけることのできる世界で認められた検査方法です。」

 日本の医学界が遅れているということですか。

「明らかに遅れています。着床前スクリーニングはアメリカやイギリス、北欧諸国をはじめ、アジアでも中国、韓国で認められています。9割以上の国で認められていて、日本で行われていないのはおかしい」

 現在、日本でスクリーニングを実施しているのは大谷レディスクリニックほか数か所だけだが、不妊や流産に悩み、スクリーニングを希望する女性が後を絶たないという。

 そうした流れのなかで、原則として着床前スクリーニングを認めてこなかった日産婦は今年2月、3年間かけて大規模な臨床研究を行うことを決めた。

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着床前スクリーニング検査(PGS)と着床前診断(PGD)の違い。

PGSは胚(受精卵)の染色体に対するスクリーニング検査であり、PGDは胚(受精卵)における遺伝子疾患(ダウン症など)の要因となる単一遺伝子の発見を目的とした検査である。
PGSは男女の産み分けではなく、染色体異常の発見を目的として実施される。合わせて不妊理由を特定し、治療方針を決定付ける為に行う場合も少なくない。受精卵移植失敗の理由、初期流産の理由は、遺伝子検査により初めて明らかになるという。
PGDは、遺伝子スクリーニングを通して遺伝子疾患を引き起こす単一遺伝子を見つけ、疾患を回避する目的で行われる。染色体異常をもつ胚(受精卵)を排除し、健康な胚(受精卵)を選び、受精卵移植を行う。

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出産した220人のうち、一人がうちの患者さん。(笑)