精子採取に新装置

西日本新聞によると
 無精子症男性の体外受精の際、精子などを取り出すために精巣の中の精細管内を透かし見ることができる装置を、北九州市八幡西区のセントマザー産婦人科医院(田中温院長)が開発した。顕微鏡を使う従来の方法では精子を見つけるのに熟練が必要だが、眼科の機器を応用した新装置で発見・採取が容易になった。実証例では成功率が従来の方法の約2倍で、不妊治療の向上につながることが期待される。

 同医院は「精細管を透視する装置は世界初」としており、今夏以降に国内外の生殖医学会で発表し、改良を進めて特許申請する方針。

 同医院によると、無精子症の精子採取は陰嚢(いんのう)の一部を切開して精子をつくる精細管を外側から顕微鏡で見ながら、組織の一部をピンセットでつまみ採るのが主流。管のうち、外観が白色で太く伸縮性のある方が精子の存在する確率が高いとされる。それでも精子が見つからない場合が多いほか、医師の経験や技術で採取成功率が左右されるため「限られた医師に頼らざるを得ない状況」(田中院長)という。

 田中院長らは眼科医が使う「細隙灯(さいげきとう)」と呼ばれる器具が光を斜めから眼球に当て、内部を透かして見ることに着目。これに改良を加えた。開発した装置では拡大鏡の先に取り付けた細隙灯の光が精巣に斜めから当たるように設計し、これまで見えなかった精細管内の透視が可能になった。精子や精子になる前の細胞が確認できた。

 同医院は1年ほど前から開発に乗りだし、昨夏に新装置を現場に導入。これまで約50件の実証を重ねた結果、採取成功率は約30%で、同病院での従来の方法での成功率(約15%)を大きく上回った。

 田中院長は「改善すべき点はまだあるが、精子採取の成功率が飛躍的に上がるはずで、無精子症で不妊に悩む夫婦には朗報となるだろう」と話している。

■無精子症

 精液の中に精子が認められない症状で、100人に1人の確率で見つかる。先天性であることが多く、染色体異常などが原因となるが、多くの場合は原因不明とされる。精巣で精子をつくることができても、精子を精巣から運ぶ精管が詰まっている「閉塞(へいそく)性無精子症」と、精管が詰まっていなくても精巣で精子をほとんどつくることができない「非閉塞性無精子症」がある。開発された装置は「非閉塞性無精子症」の治療に効果があるとされる。

=2007/01/04付 西日本新聞朝刊=

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