クイーンズ大学の研究者リチャード・オコ氏(Richard Oko)らは、精子タンパク質「PAWP」を使用した男性不妊の治療法を発見した。
この治療法により、卵母細胞が初期胚へ成長する過程を妨げる男性不妊の要因について診断可能となり、不妊治療効果も大いに期待できるという。
「PAWP(Sperm postacrosomal WW binding protein:ポスト先体WW結合タンパク質)」は精子と類似した働きを持ち、受精期間中に卵子を活性化させ、卵母細胞起動(受精期間中の一連のプロセス)を促す。
研究結果は、不妊治療において診断・治療方針を決定するプレディクターとして「PAWP」の臨床応用・適用で注目されている。
現在、一般的な不妊治療法として、直接、卵母細胞へ精子を注入する方法が採用されている。一方、「PAWP」は精子と類似した働きを持ち、男性精子の代替となる。そのため、不妊治療関係者・専門家らは、将来、「PAWP」による不妊治療法が本格的に導入されると治療成功率は高まると考えている。
不妊治療の現状
アメリカ疾病予防管理センターが発表した2013年次報告書によると、不妊治療成功率は不妊治療患者のうち37%であると報告されている。
成功率の低さは、男女ともに不妊症が様々な要素に起因するため不妊要因の特定が難しく、適切な診断や治療が実施できないことに関係がある。
オコ氏は、「PAWP」を用いた不妊治療法では不妊の要因特定や適切な診断・治療が可能となると述べている。精子タンパク質「PAWP」を分子マーカーとして不妊診断や治療に導入できるよう、今後も研究は継続されるという。