体内時計の乱れで血圧調整ホルモン過剰にて高血圧

 24時間のリズムを刻む体内時計が乱れると、高血圧になりやすくなる仕組みを京都大の岡村均教授らが解明した。

 治療薬の開発や高血圧が引き金となる病気の予防などにも役立つと期待される。医学誌ネイチャーメディシンに14日発表した。

 生体リズムの乱れは、肥満や高血圧を引き起こし、実際、昼夜交代勤務者に高血圧が多いことが知られている。しかし、詳しい仕組みはこれまで分からなかった。岡村教授らは、体内時計「Cry1」と「Cry2」の働かないマウスに、塩分の多い食事を与えると、高血圧になりやすいことを発見した。血圧を調整するホルモンが過剰に分泌されているためで、このホルモンの分泌には、副腎で作られる酵素が関与していることがわかった。酵素は体内時計で、朝低く夜高いように調整されているが、体内時計が働かないと、ずっと高いままだった。

 人間でも生活リズムが崩れると、Cryが刻むリズムに乱れが生じる。副腎の酵素は人間にもあることから同じ仕組みが働いている可能性が高い。

 岡村教授は「実際の高血圧の患者で、体内時計や酵素に変化が生じているか調べて、薬などの開発に結びつけたい」と話している。

精子の“守護神”発見 タンパク質がDNA保護

 哺乳類の精子がつくられる際に、遺伝情報が正しく伝わるようにDNAを保護しているタンパク質を、京都大の中馬新一郎助教らのチームが発見し、15日付の米科学誌デベロップメンタルセルに発表した。

 中馬助教は「いわば精子の守護神。男性不妊症の診断や治療法の開発に役立つと期待される」と話している。

 チームは「Tdrd9」というタンパク質を合成できない遺伝子操作マウスを作製。雄のマウスの精巣を調べると、DNAに自分自身を次々にコピーする「転移性遺伝子」と呼ばれる小さな遺伝子が異常に増殖し、精子が全く形成されないことが分かった。雌マウスは生殖機能に異常がなかった。

 このタンパク質は通常、転移性遺伝子を抑制する役目を果たしているらしい。チームによると、男性が原因の不妊症は全体の3〜5割を占め、中でも無精子症が最も深刻。中馬助教は「人の精巣でのタンパク質の詳しい働きについて産婦人科医と研究を進めたい」としている。

妊娠中の授乳は流産と無関係

 授乳をすると子宮が収縮し流産になるとして、明確な根拠がないまま国内の産科医療機関で中止を指導されることの多い妊娠中の授乳について、浜松市の産科医が、授乳は流産と無関係とする論文を日本産科婦人科学会の学会誌に発表した。

 石井第一産科婦人科クリニック(浜松市)の石井広重院長は、96〜00年に同院で第2子の妊娠が確認された20〜34歳の女性のカルテをもとに分析。第1子が満期産(妊娠37週以上42週未満に出産)で流産の経験がない人で、授乳中だった110人と、授乳していなかった774人を比較。授乳群で流産は全体の7.3%に対し、授乳しない群は8.4%で、有意な差はなかった。石井院長は「母乳育児は母子双方にメリットがあり、禁止はすべきでない」と話す。

 日本赤十字社医療センターの杉本充弘周産母子・小児センター長は「データに基づき、無関係とはっきり示した論文は国内では初めて。中止を指導していた施設は方針転換した方がよい」と話している。