PRP療法活用して不妊治療

青森市の産婦人科「エフ.クリニック」は7月、PRP療法という新しい再生医療を活用し、不妊治療を行う施設として厚生労働省の認可を受けた。体外受精の凍結胚移植時に、患者自身の血小板を濃縮した血漿(多血小板血漿)を患者の子宮に注入して組織の修復を図る治療法で、生殖医療領域での施設認可は東北・北海道地方では初めて。8月から治療を始め、長期間、不妊で悩んでいた女性が妊娠するなど成果を出している。
PRP療法の対象は、子宮内膜が薄い人や、何度も妊娠に失敗している人。

 凍結胚移植の際、患者自身の血液から、成長因子を含む多血小板血漿を分離し、子宮内に注入。子宮内膜で細胞が増え、血管が新たに作られることで、受精卵(胚)が子宮内で着床しやすくなる。治療によって妊娠率が3倍になるという報告もある。国内外で重篤な副作用は確認されていない。

 治療期間は、子宮内膜を整える薬の服用、2回の採血・血小板注入、胚移植などで1カ月程度。保険適用外で同クリニックでは16万円程度かかるが、公的助成制度を利用すると、一部負担が軽減される。

 8月にPRP療法を受けた県内の女性は妊娠が確認された。ほかに2人が現在、治療の準備に入っている。

 藤井俊策院長は「PRP療法は、患者自身の細胞の再生能力を生かすので、安全性が高い。不妊に悩む人に有効な治療法を知ってもらいたい」と語り、他の施設で不妊治療を受けながらPRP療法を希望する人がいれば、胚移植のスケジュールなどを調整したい−としている。

 PRP療法は、整形外科領域で普及しており、米大リーグの大谷翔平選手が右肘の靱帯損傷の治療で受けた。産婦人科領域では昨年から関東・関西で実施されている。