スーパー耐性菌を国内初検出

 インドや欧米などで感染が広がっている、抗生物質がほとんど効かない新型耐性菌(スーパー細菌)が、栃木県壬生町の独協医科大病院に入院していた患者から検出されたことが6日わかった。

 日本で感染者が確認されたのは初めて。

 同病院などによると、昨年5月、インドから帰国し入院していた50代の日本人の男性患者に、発熱などの症状が出た。検査の結果、NDM1という酵素の遺伝子を持つ大腸菌が検出され、インドなどで問題となっている新型耐性菌であることがわかった。男性は治療の結果回復し、すでに退院。他の患者らに感染は広がっていないという。

 NDM1がある菌は、病院内だけでなく健康な人の間でも広がる可能性がある。この酵素は別の種類の細菌にも入り込む可能性があり、公衆衛生上の影響度の高さからスーパー細菌と呼ばれている。専門家はサルモネラ菌や赤痢菌など毒性の強い菌に耐性が備わる危険性を警戒。世界保健機関(WHO)が各国に注意を呼び掛けていた。

 厚生労働省は先月18日、新型耐性菌の疑い例があった場合、国立感染症研究所へ連絡するよう各医療機関に要請。医療機関には、他の患者への感染を防ぐ対策をとるとともに、海外渡航歴などを聴取するよう求めている。

 ◆NDM1(ニューデリー・メタロ・βラクタマーゼ1)=ほとんどの抗菌薬を分解してしまう酵素。この酵素の遺伝子を大腸菌や肺炎桿菌(かんきん)が獲得すると、感染した患者の治療が難しくなる。この酵素を備えた細菌がインドで発見された後、同国で手術を受けた患者を通じて英国や米国に広がっている。先月にはベルギーで初の死者が報告された。

抗生剤きかぬ「スーパー細菌」

【ロンドン=大内佐紀】インドとパキスタンが発生源とみられ、抗生物質がほとんど効かない新たな腸内細菌に感染した患者が、両国のほか、欧米諸国でも急増し、17日までに、ベルギーで1人の死亡が確認された。

 英医学誌ランセットは世界的な感染拡大につながる恐れがあるとして、対策を呼びかけている。

 AFP通信によると、死亡したベルギー人はパキスタンを旅行中、自動車事故に遭い、同国の病院からブリュッセルの病院に移送されたが、すでに新型耐性菌に感染していたという。

 新型耐性菌は「NDM1」という新しく確認された遺伝子を持ち、抗生物質への耐性が著しく高く、「スーパー細菌」の俗称がついている。感染すると、菌や菌の毒素が全身に広がって臓器に重い炎症を起こし、致死率の高い敗血症などになる恐れもある。ランセット誌は、英国で37人の感染者が確認されたとし、AP通信によれば、オランダ、スウェーデン、米国、オーストラリアなどでも感染が確認されている。

 同誌は、感染経路について特に、「インドには、欧州や米国から美容整形を受けに行く人が多い」と言及している。