無痛分娩を安全に 日本産婦人科医会

朝日新聞によると、

 日本産婦人科医会は、無痛分娩(ぶんべん)を実施する医療機関に対し、出血や麻酔合併症などに適切に対応できる体制整備をするよう提言することを決めた。同医会が毎年まとめる、産婦人科医らに向けた妊産婦の安全なお産に関する提言に盛り込む。提言で無痛分娩に言及するのは初めて。8月末までに正式にまとめる予定。
 大阪府吹田市で5日に開かれた、同医会に全国から報告される妊産婦の死亡事例について検討する委員会の会合で提言について話し合った。提言案では、無痛分娩は陣痛促進剤(子宮収縮薬)や器具を使って赤ちゃんを引き出す方法が必要となることが多く、通常の出産とは異なる管理が必要だと指摘。麻酔薬を使うことによる局所麻酔薬中毒など、まれではあるが起こりうる命に関わる合併症に適切に対応できる体制が必要だとした。
 お産全体の中で無痛分娩の事故率が高いというデータはない。ただ、大阪、兵庫、京都などで妊産婦の事故が報告されたため、提言の中で安全策の重要性に言及することにした。同医会の石渡勇常務理事は、「異常が発生した時にすぐに蘇生できる体制を整えておくことや、助産師や看護師らも必要な留意点を普段から把握しておくことが必要だ」と話している。

無痛分娩に気をつけて

出産の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」について、厚生労働省研究班(主任研究者・池田智明三重大教授)は16日、医療機関に対し、急変時に対応できる十分な体制を整えた上で実施するよう求める緊急提言を発表した。

 研究班は、2010年1月から16年4月までに報告された298人の妊産婦死亡例を分析。無痛分娩を行っていた死亡例が13人(4%)あり、うち1人が麻酔薬による中毒症状で死亡、12人は大量出血や羊水が血液中に入ることで起きる羊水塞栓(そくせん)症などだったという。

 池田教授によると、国内の無痛分娩は近年、増加傾向にあり、データ上、無痛分娩で死亡率が明らかに高まるとは言えないという。ただし、「陣痛促進剤の使用や(赤ちゃんの頭を引っ張る)吸引分娩も増えるため、緊急時に対応できる技術と体制を整えることが必要だ」と話している。

朝日新聞によると
大阪府和泉市の産婦人科医院で1月、麻酔でお産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で出産中の女性(当時31)が意識不明になり、その後死亡したことが捜査関係者らへの取材でわかった。府警は院長らから事情を聴いており、業務上過失致死容疑での立件も視野に調べている。

 医院の代理人弁護士らによると、女性は1月、脊髄(せきずい)を保護する硬膜の外側に細い管を入れ、麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を受けた。この注射の後、呼吸不全に陥り、意識不明になった。堺市内の病院に搬送されたが、約10日後に死亡。子どもは無事に生まれたという。府警は医師らが人工呼吸など十分な措置を取ったかについて調べている。

 無痛分娩は赤ちゃんにほとんど影響せず分娩の疲労が減って産後の育児や職場復帰がしやすい利点があるとされる。2008年度の調査では国内のお産全体の2・6%と推計されたが、現在は5?10%ほどに増えているとみられている。

 一方で、厚生労働省の研究班が妊産婦の死亡例を調べると、無痛分娩をしていて死亡した事例もあった。研究班は今春、医療機関が無痛分娩をする場合、麻酔による合併症や出血、緊急帝王切開などに十分対応できる体制を整える必要があるという提言を出した。

 順天堂大の産科麻酔担当の角倉弘行教授は「麻酔による事故は起こりうるが、体制を十分整えて対応することで麻酔による死亡は防げるはずだ」と指摘する。